聖女は慎重に周囲を見渡し、人気がないことを確認して、声を落として俺がどうしたいのかを聞いてきた。

俺が転生者であることや魔法が使えるのを隠していることに、最大限気を使ってくれているのだと感じた。

改めて考えると、俺は良くても客商売をしている両親が、俺が転生者だと困る可能性を見落としていた。安易に転生者であることを暴露してしまった自分の浅はかさに、言葉を失う。

俺がそんな状態なのを察してくれたのか、聖女が改めてゆっくり話す場を設けると提案してくれたので、了承し、学校の案内を続けた。

聖女は見かけが子供だがやはり中身は大人で、見ための雰囲気よりも賢くて真面目な人なのかもしれない。

とりあえず、今後どうするかは父さん達と相談して決めようと思った。

その日、いつも通り手伝いをして店じまいしたあと、両親に話をする時間をもらった。

いつもは先に休んでいるじいちゃんにも声をかけ、4人集まったところで話を始める。

「僕には、前世の記憶があります。所謂、転生者、だと、思います。実は、魔法も、使えます」

不安と緊張で、言葉がうまく出てこない。

「今日、学校に聖女様が来た時、僕が転生者だと、知られてしまいました。今まで、黙っていて、本当にごめんなさい」

みんなの反応が怖くて顔を上げることができず、以前自分がつけてしまったテーブルの傷を見続けていたら、じいちゃんが口を開いた。

「知ってたよ。もう何年一緒にいると思ってんだ。気づかないわけないだろ?」

驚いて顔を上げると、みんなが、いつもの優しい笑顔で俺を見返してきた。

「お前を養子にする時にじいちゃんから話を聞いてたけど、聞いてなくても、すぐ気づけたと思うわ」

母さんの言葉に、父さんが笑いながら頷く。

「お前、いつも寝言で知らない言葉使ってるんだよ」

え?

「お前の寝言は本当に凄いのよ。会話ができそうなくらいはっきりと喋るんだけど、何を言ってるか全然わからないの」

まじか。

「でもこの前、彼女欲しーって声が聞こえてきて。多分あれは寝言だろ?最近わりと知ってる言葉で話すようになったよな?」

聞こえてきたって、、俺はどんだけ大声で寝言を発してるんだ?

しかも内容!!!

「ああ、そうかもねえ。こっちの世界に馴染んだ証拠よね?感慨深いわあー」

転生とか魔法とか、もうどうでもよくなってきた。恥ずかし過ぎて、多分俺の顔は真っ赤になっていることだろう。

そしておそらく、じいちゃんや両親にとっても、俺が転生者かどうかなんて、どうでもいいことなのだ。

改めて彼らに感謝し、絶対に彼らを裏切るようなことはしないと、心に誓った。