学校への訪問が決まり、あまり仰々しくならないよう、教皇が従者として、俺が護衛としてついて行くことになった。

聖女と教皇と王子、、十分仰々しいが、あくまで聖女の学校訪問だ。

そして今、噂の少年が俺達の目の前にいる。聖女と同じ黒目黒髪で、あっさりとしてしゅっとした顔立ち。

「はじめまして、聖女です。今日は案内、よろしくお願いしますね」

通訳魔法をオフにしている聖女の言葉を教皇が訳して伝えているが、彼が直接聖女の言葉を理解していたように感じたのは、転生者かもしれないという思い込みのせいだろうか。

「ダニエリオです。よろしくお願い致します」

さっきまで挙動不審だった少年が、聖女を食い入るように見ながら自己紹介した。

聖女の言葉で、自分と同じ転生者と気づいたのかもしれないが、今日は様子見のため、魔法や転生については触れないことになっている。

それに、聖女はとてもかわいらしいので、子供の彼なら一目惚れした可能性もあるだろう。

先日この街で購入したドレスは、これまでのフワフワしたものと違い、少し女性らしさがでてきた聖女のスタイルの良さを強調している。

俺が子供の聖女によこしまな感情を抱くことはないが、同じ年頃の男子がどう感じるかはわからない。本当はこのドレスで出歩いて欲しくないが、口出しせずにぐっと我慢していた。

子供にまで嫉妬するのは我ながら余裕がなさ過ぎるとは思うが、聖女のことになると、どうにも制御がきかなくなる。

この3年、王妃は何度も聖女を誘拐しようとした。

王国に戻れば、王妃は強引に結婚の話を進めるのだろう。王妃が兄と聖女の結婚を諦めない限り、俺と聖女の結婚はありえないのだ。

俺は何度となく、王国には戻らないでこのまま聖女とどこかへ逃げてしまいたいと思った。だがただ逃げてるだけでは、なんの問題の解決にもならない。

聖女は、自分の意にそぐわない結婚を、簡単に受け入れることはないだろう。それは兄に限らず、俺との結婚も同じだ。

聖女が成人するまであと2年、それまでに、俺が聖女の一番になってみせる。

そしてこの件に関して、俺は兄や王妃に遠慮はしないと決めているのだ。

兄が何を考えているかはわからないが、少なくとも聖女に危害を加えようとする王妃を許すつもりはない。

王国に戻ったら、やるべきことが多くある。

正直、護衛などいらないほどに聖女は強くなっているので、油断してつい余計なことを考えていたら、少年が突然足を止め、聖女に話しかけた。

「※※※※※※※、※※※※?」

その様子から、彼が聖女に一目惚れしてたわけではなさそうで一安心だが、いきなり今日の予定が狂いそうだ。