王妃の元影に少年の調べを任せると、翌日には報告が上がった。

彼らは、王国の調べを終えたあとに魅了は解いているのだが、何故か我々の元にとどまることにしたらしく、その後も何かと役に立ってくれている。実にありがたい。

報告によると、彼は9年前に近くの村で老人に拾われダニエリオと名付けられ、そのままその老人と村で生活していたという。それ以前の消息は残っていなかったそうだ。

彼が本当に聖女と共に召喚されていたとしたら、5年の空白があるということだ。

老人に拾われた時には5歳になっていたはずだが、体が小さく3歳だと思われたのだろう。今は12歳ということになっていた。

昨日見かけた彼は聖女と比べてもだいぶ大きく見えたので、彼が私達の探していた転生者である可能性は高いだろう。

「彼は魔力があることを隠しているようなので、目立つような接触は避けた方がいいかもしれないですね」

「でも、気になるなあ。前世のこととか、転生後のこととか、共通の話題で盛り上がりたいなあ」

いや、盛り上がるような内容ではないだろう。

「それにさ、魔力があるのを隠し通せるって、何気に凄いよね?どうやるのかジョニデも聞いてみたいでしょ?」

5年の空白期間を彼がどう過ごしていたかはわからないが、聖女と同様に、少なからず魔力が必要だったはずだ。

病気や怪我をしなければ教会との接点はないし、魔力の暴走さえ起こさなければ、隠せないこともないだろう。

だが彼は7年前、食堂夫婦の養子になる際に、教会で親子の契りを交わしている。少なくない魔力を持っているであろう彼のオーラに、神父が気づけなかったとは考えにくい。

聖女の言う通り、彼は魔力を感知させない能力を持っているのかもしれない。

「確かに凄く気になります。彼とはじっくり話してみたいですね」

何かいい方法はないものかと考えてみるが、一度逃げられているし、そう簡単な話ではないだろう。

「私が学校を訪問して同じ年頃の子に案内をお願いするのは、そんなに違和感ないと思うんだけど、どうかな?お世話になった食堂の息子が通う学校なんだから、いい子だって噂も聞いてるし、彼を指名してもいいんじゃない?」

おお、さすが聖女。それは確かに凄く自然に彼の逃げ道を塞いでいる。

「では、彼の警戒心をとくために数日待ってから、学校を訪問してみましょう」