ほんの一瞬、聖女と同じ魔力を感知した。

目を向けると、人垣の向こうで少年が聖女をじっと見つめている。今は魔力を感じないが、念のため聖女の盾になるよう間に入ると、その少年と目が合った。私に気づいた少年はこちらをチラチラ見ながら逃げていく。

結界を張って魔力を感知されないようにしているのか、彼の魔力が感じられたのは本当に結界を張る一瞬のみで、それもこの距離だったからギリギリ感知できたのだろう。

訓練を受けているのか、魔力操作は完璧だった。

教会から彼に関する報告は受けていない。それが意図的なものかどうかを知る術はないだろう。

、、、と心配していたが、どうやら本当に把握していなかったようで、彼に関する情報があっさりと提供された。

食堂を営む夫婦に養子として迎えられ、学校では成績優秀、食堂の手伝いも進んでする、近所でも有名ないい子らしい。

癒し会の日はいつも疲れてすぐに寝てしまう聖女のために、食事をしながら彼について報告しようと、わざわざ部屋に食事を用意した。

街の規模が大きかったので、今日は特に疲れてるのだろう。聖女は食べるだけでも精一杯で、まともに話が聞ける状態ではなかった。

案の定、食事を終えた聖女はほぼ寝ている。体力的にはまだ4歳なのだ、当然の結果だろう。

話を聞くために精一杯頑張ったせいで、聖女がデザートを口に入れたままウトウトし始めてしまい、サルが落ちてくるデザートを器用に処理していて、さすがとしか言いようがない。

「食べながら寝ちゃうとか、赤ん坊みたいで聖女は本当にかわいいな」

王子がウトウトしている聖女を眺めて微笑んでいる。

王子はだいぶ前から聖女のことが好きだったらしく、世界を回る旅を始めてからは、それを隠そうとしなくなった。

聖女はそんな王子の気持ちを受け流し続けているので、私もそれにならっている。

「でもその少年の方が聖女っぽい気がするのは勘違いか?」

聖女の口からデザートがとめどなく落ちてきて、だんだんサルの手に負えなくなっている。どれだけ口に詰めたのだろうか。

聖女が聖女なのは間違いない。

間違いないのだが、、

「王子、確信が揺らいでしまいそうなので、そんなこと言わないで下さい」

とりあえず、この残念な聖女をベッドに運んで、話は明日することにしよう。