その後俺は、実にうまいことこの世界に馴染んだ。

森を抜けて少し行ったところに小さな村があり、そこに住むじいちゃんに拾われて、面倒をみてもらえたのだ。

言葉は理解できなかったが、まだ3~4歳の幼児だったおかげで怪しまれることもなく、あの整体師のように笑顔を振り撒くだけで、じいちゃんだけでなく、村のみんなに可愛がられた。

村には魔法が使えそうな人がひとりもいなくて、その頃には完全に魔法を制御できていた俺は、周りにばれないよう細心の注意を払い、普通の子供を装った。

凄く平和だった。

このままこの暮らしが続けばいいと本気で思っていたのに、俺の面倒をみてくれていたじいちゃんが、ある日突然倒れた。

迂闊だった。こうなる前に魔法で癒しておけば誰にも気づかれなかったのに、倒れてしまってからでは手の出しようがない。

近くの街に住んでいるじいちゃんの息子が、知らせを受けてすぐにやってきた。

父親が見知らぬ子供の面倒をみていると知って驚いていたが、わりとあっさり受け入れ、じいちゃんと一緒に俺も街へと連れ帰ってくれた。

じいちゃんは教会に連れて行かれて治癒魔法で復活したが、そのまま息子夫婦と同居することになり、まだ幼い俺だけを村に帰すわけにもいかなかったのだろう、俺は息子夫婦の養子として、街で一緒に暮らすことになった。

村にいた頃は、日中遊びがてら森に入って魔法の練習をしていたが、ここでは無理だろう。

じいちゃんの病気を治したってことは、教会には魔法を使える人達がいるんだろうけど、なんとなく俺の魔法のことは黙っていようと思った。

俺は魔法使いじゃなくて、あの整体師みたいになりたいんだ。

俺にとっては、世紀の大魔法使いになるよりも、あのイケメン整体師のようになる方が難しい気がする。いつも笑顔でいるのは思ってたよりも楽じゃないし、みんなに優しく親切でいるのもなかなかしんどい。

だが俺は、絶対に諦めない。

例え魔法が使えなくなったとしても、俺は絶対に恋人を作るんだ!