「世話になったな」

次にいつサウェリオに会えるかはわからない。もしかしたらこれが最後になる可能性もあるだろう。

「また来ます。あの絶品スープ、また絶対食べに来ますから」

そばにいた聖女が突然会話に加わってきた。

「ジョニデが嫌がっても、私が引きずって連れてきますよ」

「聖女様、、ありがとうございます!お待ちしてます!」

サウェリオが年甲斐もなく涙を流して聖女に礼を言い、そのまま私に抱きついてきた。

「兄さん、来てくれて本当にありがとう。また絶対に会おう、絶対に」

「ああ、すぐに手紙も出すよ。サウェリオ、体に気を付けるんだぞ?」

「はい、兄さんもお元気で」

優し過ぎる聖女のおかげで、もう叶わないと思っていた帰郷を果たし、またいつか戻るという思いで、故郷をあとにすることができた。

「聖女、本当にありがとうございました」

荷馬車が出発してから、改めて聖女に礼を述べた。

「ジョニデにはいつもお世話になってるし、これからも一杯お世話になっちゃうからね」

そう言いながら笑顔を見せる聖女から、魅了の魔力が溢れ出すのを感じた。

「結界も張らずに魅了の練習はやめて下さい!従者や護衛には聖女の魅了は毒ですよ!?」

「ごめーん。なんか今ならジョニデに魅了が効きそうな気がしたんだもーん」

「聖女!すぐに解除してくれ!これは俺でもギリギリだ!」

王子が悲痛の叫び声をあげている。これは王子と私以外は完全に聖女の魅了にやられてるだろう。

「えっと、、魅了の解除は、、」

聖女が今更本で解除の方法を捜している。本当にしょうがない人だ。

聖女より強い魅了の魔力を放出してそれを解除する。これで聖女の魅了も解除されたはずだ。

「今一瞬、ジョニデに抱かれてもいいって思っちゃったのは、魅了のせいなのね?」

聖女がなんとも気だるげに、馬鹿なことを口走る。子供の聖女が何を言ってるんだ、、

「まだ出発したばかりですが、しょうがないので一旦休憩を入れましょう」

荷馬車が止まり、馬を降りた王子がこちらに近づいてきた。

「聖女、恐ろしいことに、俺も同じ気持ちになったぞ」

護衛や従者達も、顔色を悪くして、王子の言葉に頷いている。

「ひーー!魅了!恐ろしい子!」

なんだかどっと疲れた。これは先が思いやられるな。