勝手に結婚の準備を進める王妃を非難しておいて、自分は11歳の聖女に揃いの服を着ることを強要するとか、、俺は一体何をしてるんだ。

聖女が出ていって少ししてから、俺は猛烈な後悔に襲われていた。

さっき後悔しないために聖女に服を渡したはずなのに、渡したことを後悔するなんて、もう意味がわからない。

部屋でひとり頭を抱えていたら、準備を終えた聖女が弁当入りのバスケットを持って入ってきた。

「おまたせ!レオ様も準備できた?」

はあああ、碧の布地に金の飾りが付いたワンピース。恥ずかしいほどに俺色をまとった聖女は、まるで妖精のようにかわいいな。

ま、選んだのは俺だが。

俺の服は基本白だが、差し色に聖女と揃いの碧と金を使っている。この程度の揃え方だと、転生者の聖女には伝わらないのかもしれない。

聖女からバスケットを預かり、そのまま手を取って部屋を出る。海は宿から歩いてすぐのところにあり、ほどよい場所に従者が敷物と日除けを準備してくれた。

「ジャジャーン!ジョニデがいないのをいいことに、ワインを持ってきちゃったよー!」

「ああ、助かる」

「ふふっ、だよね?」

緊張するあまりつい本音がもれてしまった。とりあえず一杯飲み干す。

だがそれ以降は、聖女が普段と変わらない様子でいてくれたおかげで、普通に食事と会話を楽しんだ。俺よりも大人な聖女が、気まずくならないように気を使ってくれていると感じた。

「腹ごなしに少し浜辺を歩こうか」

そう言って手を差し出すと、聖女は俺の手を取って立ち上がり、そのまま歩き出した。

「レオ様。少し長旅になるけど、これからもよろしくね?」

「ああ、もちろんだ。楽しみだな」

「そうだね。うん、楽しみだね」

聖女が何か言いたげだったが、言葉を飲み込んで、その代わりに吹き出した。

「アハハハ!駄目だ。本当もう無理!我慢できないよ!」

そりゃそうだろう。歩き出してからずっと、サルが俺の頭に乗って髪をかき混ぜ続けてるんだからな!

でも正直、聖女に決定的なことを言われずに済んで、少しほっとしていた。

まだしばらくは、今のままがいい。