次の国への出発が数日後に迫り準備を進めていたら、王国から影のひとりが戻ったと教皇から報告が入った。

「どうやら王妃は、王太子と聖女の結婚を考えているようで、婚儀の準備をしているそうです」

「聖女はまだ11歳だぞ!?婚約じゃなく、婚儀なのか!?」

「はい、間違いなく、婚儀の準備を進めているとのことです」

「うわーなんか色々と引くわー」

聖女が他人事のような感想をもらした。

「とりあえず、命の危険はなさそうですが、聖女の場合元々その危険はないと思いますしねえ」

「そうだね。私の場合、さらわれたり操られたりの対策を念入りにしとかなきゃだね」

聖女が俺の兄と結婚させられるかもしれないってのに、このふたりの緊張感のなさは一体どういうことなんだ?

そうだ、今みたいにひとりでフラフラ図書館に行ったり教会に行ったりするのは危ないじゃないか。

「今日から俺は、聖女の護衛をすることに決めた。これは決定事項だ」

聖女が何か言いたげにこちらを見てきたが、俺が意見を変えそうにないと諦めたようだ。

「わかったから、レオ様もちゃんと休んでね?マッチョ達と交代で、ね?」

俺の体を心配してくれるのか。やはり聖女は優しい。

「それから、侍女が必要だな」

「それもそうですね。教会で丁度いい人材がいないか、早速聞いてみましょう」

今の時点で可能な限りの対策を立てて、その場は解散となった。

すると聖女がイソイソと近づいてきた。

「約束してたから、今日はこれから海に行こう。レオ様は時間ある?」

「え?ああ、ある!いくらでもあるぞ!」

「そっか、良かった。もう水着とかは準備できないけど、今日ジョニデは最後にご両親のとこに行くって言ってるし、お弁当持ってふたりで行こう」

「ちょ、ちょっと待っててくれ!」

恥ずかしながら、あのあと俺はひとりで服屋に行き、聖女と揃いの服を購入して、隠し持っていた。

聖女と海に行くのはもう諦めていたが、なんとなく揃いの服は諦めきれなくて、、

俺は今、もの凄く顔が赤くなっている自覚があるが、後悔はしたくないから、恥を忍んで服を聖女に手渡した。

聖女が一瞬固まった。

「う、うん、わかった。じゃあ、またあとで。準備できたら声をかける」

たどたどしく服を受け取り、聖女は部屋を出ていった。

はあああ、なんだこれは。恥ずかし過ぎて死んでしまいそうだ。