それから数日後、聖女は教会で『癒し会』を開いた。

「癒し会ってなんだ?」

「ん?握手会とかチェキ会とかの聖女バージョンで、癒し会」

説明が全く意味をなしてない。

「ファンサだよ、ファンサ」

「ふぁんさ?」

聞けば聞くほど、謎が深まる。これはいつもの考えたら負けなやつだな。

結論から言うと、癒し会は大盛況だった。癒しを求める人達だけではなく、聖女を間近で見たいという人々も集まったため、一時混乱状態となってしまうほどだった。

一度中断して仕切り直しが必要かと思われた時、聖女が机に上がり皆に静止を求めた。

次の瞬間、聖女の魔力が、心地よく体を抜ける感覚を覚えた。

「癒し会は終了。みんなを一列に並ばせて、握手会に切り替えよう」

机の上から聖女の指示が飛び、手分けして皆を一列に並ばせていった。

聖女は通訳魔法をオフにしているようで、言葉が通じていないと理解した人々は素直に握手だけしてその場を離れてくれたため、着実に長蛇の列が解消されていく。

「ああ、しんど」

結局半日以上かけて握手会を終わらせた聖女は、疲れて今にも眠ってしまいそうな様子だ。

そこに厳しい表情の教皇がやってきた。

「聖女、最初の魔法に魅了を混ぜましたね?失敗したらどうするつもりだったんですか?」

なんだって?

「うう、だって、あーでもしないと収まりがつかなかったでしょ?ほんのちょっとだよ。おかげでみんなすんなり言うこと聞いてくれて助かったじゃん?」

「かなりの範囲に癒しの魔法を放ったようですが、魔動力は大丈夫でしたか?」

「うん、それは大丈夫そう。寝る前に教会でギリギリまで魔力を使わせてもらってるせいか、順調に魔動力が増えてきてるんだ」

聖女は図書館で勉強ばかりしてるのかと思っていたが、ちゃんと修行も続けていたのか。

「凄いんだよ!教会の訓練施設!完璧な結界が張られてて、魔法が使いたい放題なんだよ!」

聖女が目をキラキラさせながら、俺に話しかけてきた。

このキラキラは魅了でそう見えてるだけなのだろうか?

「王子は天然の魅了持ちなので、あの程度の魅了では効果は出ないと思いますよ?」

俺の考えてることを察した教皇が、親切に教えてくれた。

「魅了にかかるとそれが魔法のせいだと疑う余地がなくなるんです。恋は盲目って言うでしょ?」

魅了、、恐ろしい魔法だ。