「そもそも王国に行っても、別に何かやることがあるわけじゃないんだよね?」

「そんなことは、、」

聖女って何かやることがあるのか?そう言われると、何もない気がしなくもないが、そんなことないよな?

期待を込めて教皇を見る。

「そう言われてしまうとこれといって何かあるとは言えませんが、先代の聖女は日々人々のために祈りを捧げていましたね」

教皇が露骨に俺から視線を外した。

「ほらね?それとも何か急いで帰らなきゃいけない理由でもあるの?」

「それは、、」

ないかもしれない。だが、そういう問題じゃないだろ?

「それにさ、王国の人達、私のこと狙ってるよね?レオ様を信じてるから正直に言うけど、王国の思い通りにはなりたくないし、私なりに対策を講じたいから、時間を稼ぎたいってのもあるの」

そうだった。少なくとも王妃が聖女を狙っているし、他にも同じように考えてる者がいるだろう。

教皇が寝返らせた影が戻ってくれば何かわかるかもしれないが、狙われているとわかっていて王国に連れて行くのは、確かに無防備過ぎるかもしれない。

「わかった、確かに聖女の言う通りだ。聖女の準備が整うまでは、俺も寄り道に付き合おう。俺を信じて話してくれたこと、嬉しかった。ありがとう」

聖女の目をまっすぐ見つめて礼を言うと、サルが俺の顔をめがけてテーブルに置いてあったフォークを投げてきて、俺はそれを華麗に受け止める。

ふっ、馬鹿め。サルと違って俺は賢いんだ。お前の行動パターンは既に見切った。

思った通り、サルが俺に向かって特攻してきたので、拘束して攻撃を回避した。

「残念だったな。こう見えて俺は軍人なんだ。その気になればサルの攻撃なんて余裕で避けられる」

やはり先日の服屋でのことが尾を引いているのだろう。聖女が顔を赤くしてるのが視界に入った。

俺を意識してくれてる証拠だな。照れてる様子がなんともかわいいじゃないか。

俺が聖女に気を取られてるのを察したサルが、口の中に隠していたピーナッツを俺の顔に吹き飛ばしてきやがった。

聖女の大切なサルじゃなければ、こいつはとっくにこの世を去っていることだろう。