とりあえず、私は翌日から図書館に入り浸った。もともとそのつもりだったし、気持ちを落ち着かせるためにも、丁度いい。

ジョニデが言ってた通り、この街の図書館はかなり規模の大きいものだった。教皇の生まれ故郷というのも関係してるのか、魔法に関する専門書も多く、全てに目を通すのは無理そうだ。

面白そうな本を数冊手に取り、窓際に用意された机に移動した。

魔法の本ではなく、この世界の歴史について書かれた本に目を通す。ジョニデから少し触りを聞いてはいたが、歴史は聖女が誕生する少し前から記されている。

聖女が召喚されたことで世界は安寧を取り戻し、聖女を中心として人が集まり始めた。世界中から優秀な聖職者が集まり、そこは神殿となる。神殿の周りには魔力を持たない信者が多く集まって町ができ、その規模は神殿と共に大きくなった。そして聖女を召喚した教皇が王となり、今の神殿の元となるカスティリオーネ神国がつくられた。

ある時、隣国に凄まじく大きな魔力を持つ転生者が現れ、圧倒的な強さで周辺国をその支配下へと納め、現在のトレドミレジア王国の基盤を完成させた。

当然、聖女のいる国にも侵攻が始まる。

聖女を崇拝する者達が集まってできた国で『聖女を守る』という大義を掲げれば、瞬く間に挙兵が可能だった。しかも神殿には優秀な魔法使いが大勢いる。

転生者による魔法攻撃は神殿の魔法使いの決死の防御で最小限の被害に収まったが、兵隊による小競り合いは止まらず、ジワジワと犠牲者が増えていった。

癒しの魔法も全く追いつかず、心を痛めた聖女が、これ以上犠牲者を出さないため、終戦に向けた話し合いをすべきだと教皇達を説得した。

国の中枢部分を神殿に移し、神殿と王国が共存関係を保つことを条件に、国を明け渡すことが決定する。

国民の反発がなかったのも、聖女の説得によるものだった。王国の好きにはさせない、これまで通り、私はあなた方と共にあると。

実際王国の他国への侵攻はそこで止まり、その後世界地図は大きく変化していない。

聖女って、、なんか凄いな。