【“可愛い”は飾り】
私は”心の“スイッチを入れ替え、配信開始のボタンを押す。

「やっほぅ〜。雀だよー。みんな元気にしてたー?
今日はねー、雑談でもしよーかな。みんなどう思う?」

~可愛いを演じる僕が開始の合図を告げる~

閲覧数は1万人か。新人にしてはそこそこ知名度上がってきた感じか……。
いいねやコメント数も上々。正直気分がいい。
この世界はやはり私にはぴったりな場所。けれど、認めてくれる人がいないと奈落に落ちてしまう道。

「あ、〇〇お茶ありがとう!
すずちゃんが最近楽しかったことは?だってー。質問ありがとう。
うーんそうだなー。
友達の家でゲームとか?スマ○ラとか楽しいよー。私の得意のキャラ何だと思うー?」
私は咄嗟に嘘を吐く。有名人なら多少の捏造くらいどうって事ない。
友達なんて出来た事ないし。スマ○ラは憂さ晴らしにやるけど。
「〇〇〇〇~w」
「△△△△~。」
「オリジナルの剣のキャラ。」
「お、正解~。椿くん?かなー。
そうなんだよね。僕、公式ゲームのキャラ使わないんだー。
風ビューって吹かせるの好きなんだ!」
コメント欄に“可愛い“という言葉が溢れる。
全て計算どうり。

「〇〇〇〇。」
「⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎~。」
「みんな最高~。配信ってやっぱいいねー。」
そんなこんなで配信は終わりの時間に差し掛かる。
「今日の配信はここまでおつすず~。」

私はボタンを止めて。掛かってきた電話に対応する。

「雀。今日もよかったぞー。可愛かったし。」
「そんな事どうでもいいので早くしてくれません?紗奈さん。」
この配信終わりで疲れてる所に電話を鳴らしてきたのは、マネージャーの菊本紗奈さん。私の話し合い。付き合いも2年くらいあって、一応何でも話せる仲ではある。
「業務連絡!あんた他人と直接話たがらないから、行ってやってんのよ?」
「ア、ソウデシタネー。すいません。」
私は軽く答えた。
「棒読みやめろ!まあいいわ。すず、明日から、うちのバイト入ってもらうことにしたから。あ、手伝いだからゆるくでいいよー。
歌い手に必要な会話のスキル、身につけてもらうわ。てことで、じゃおやすみ~。」
「あ、ちょっと。」
ほんとに嵐みたいな人。まあいいや。エゴサでもしよ。
「雀ちゃん可愛い~。」
「すず~の配信よかった。」
「歌枠も楽しみです!」
僕、いや私には、彼らがいないと生きれない。