「ーー管野くん、おはよう」


「……永井、おはよう」




朝一番。学校の昇降口、朝のあいさつ。

いかにも普通だと、誰もが見たらそう捉える状況。


平然と、でも当然というように隣に並んで教室へ向かうふたりの背中。



「今日も、あついね」


「うん、そうだね」



それぞれの口から交わされるのは、ただの天気に関するなんとも社交辞令的なぎこちないお話。


あついのは、このふたりーーではなく、ただの夏の晴れ晴れとした天気なのだ。


淡々とするふたりーーーされど付き合っているふたり。


回りには秘密、というなんとも背徳的な関係はもちろんこの甘さの欠片もない会話からは分からない。



分からないけれどーーー




『ひゃあああ……!今日も律くんがかっこよすぎる……。あっ、いまちょっと肩触れちゃった…!どうしよう熱い溶けそう律くんが神々しすぎて死んじゃう……』



『やっばい……また“める”って呼びそうだった危ねえ……。ていうかなんだこの天使は。いや女神?可愛すぎて目がいたいんだけど……。心臓爆発して死にそう』





じつは心のなかでは甘々な、似た者同士のふたりなのです。