再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む

「記入しなさい。ほかはすべて、代理人に記入させているから」


え……噓でしょう?
私たち、つい1ヶ月ほど前に婚姻届けを提出したのに。

これはもしかして、悪い夢?


「ま……待ってください。私たち、これから……」

「黙りなさい。記入したら、蒼汰にクリニックに持って来させるわ。いいわね!?」


部屋中に響き渡るような声で私に罵声を浴びせると、椅子に置いてあったバッグを手に掴みリビングから出て行くお母様。
バタン!と大袈裟に玄関の扉を閉めて、パンプスを軽快に鳴らしながら帰ってしまった。

1人部屋に残された私は一気に緊張から解放され、へなへなとその場に座り込む。


「こわ……怖かった」


まだ身体が震えている。
それに、拒否することも許されないまま突きつけられた離婚届。

確かに、キャバクラで働いていたという過去は変えられない。
でも、それは過去であって、今から未来を変えていくことはいくらでも可能なのに……。

ゆっくりと立ち上がり、テーブルに置かれた離婚届を手にする。


「……嫌だよ」


政略結婚だったかもしれない。

でも、蒼汰さんと過ごしてきたこの数ヶ月は本当に楽しかったし、これかた料理や医療事務の資格取得に向けて勉強もしていく予定だった。