蒼汰さんの車の助手席に乗り込んで、しっかりとシートベルトを締めたのを確認すると、ゆっくりと車が発進する。
なんだか、今から婚姻届けを提出しに行くだなんて信じられない。


「なんか緊張してない?」

「え、いえ。大丈夫です……」


嘘ばっかり。本当は、緊張してる。
バレないように平静を装っていたつもりだったけれど、蒼汰さんに対しては無意味だったよう。

緊張を紛らわすかのように「ふぅ」と大きく息を吐いたとき、私のスマホがバッグの中で震えて、メッセージを受診したことを知らせた。

バッグからスマホを取り出し内容を確認してみる。


「あ……」

「どうした?」

「めぐみさんです。前の勤務先の……。『入籍おめでとう』って、メッセージがきました」


まさかの相手に、急に気持ちが弾みだした。
こんな風にメッセージをくれるなんて思っていなかったし、私たちが入籍する日を覚えていてくれたことがなにより嬉しい。

今は新しい生活に慣れていなくて毎日バタバタしているけれど、時間ができたらまた会いたい。


「よかったな」

「はい……嬉しい。緊張がほぐれました」

「やっぱり緊張してたんだな」


「あっ」と、想わず手を口に当てた。
ついさっき「緊張していない」と言ったばかりなのに、自分から暴露してしまったみたいで恥ずかしくなる。