例えそれが、親のエゴだと言われてもいい。
私は、蒼汰さんとあたたかい家庭を築いていきたい。


「パパにあえるの?」

「うん。蒼斗のパパだよ」

「そうかー。あお、パパにあいたい!」

「……うん。行こうか」


玄関で靴を履き終えた蒼斗の手をしっかりと握ると、私はアパートを出発した。

約束の場所は、蒼汰さんのマンション。
車で行くつもりだったけれど、今日はバスを利用する。

というのも、蒼汰さんとの打ち合わせで「出掛けるかもしれないから、車以外の手段で来て欲しい」と言われていたから。
蒼斗もまだバスを利用したことがないから、いい経験になりそうだ。

蒼斗の手を引きながらアパート近くのバス停へと向かう。
しばらくするとバスが到着し、蒼斗と一緒に乗り込んだ。

幸いにも1人分の席が空いていて、蒼斗をそこへ座らせた。


「バス! すごいね!!」

「蒼斗、たくさん人がいるから、シーだよ」

「はぁーい……」


初めてのバスに興奮気味の蒼斗を静かにさせ、蒼斗のすぐ横に立つ。
ゆっくりとバスが動き出すと、蒼斗は窓の外を眺め始めた。

目的地までは約10分。
蒼汰さんと蒼斗は初めて会うことになるから、私も緊張気味だ。