カマイユ~再会で彩る、初恋



祥平から『飲みに来い』というメールが来ていて、彼女が食器を片付けてくれている間に『今日は彼女が来てるから行けない』と返信したら、すぐさま電話がかかって来た。
神宮外苑の花火大会があるから、高輪にある祥平の店は暇だったらしい。

『優しい先生でいたら、いつになっても関係性は変わらないぞ』
祥平の言葉の意味は痛いほど分かる。

俺と彼女の出会いが、先生と生徒という禁断の関係だったから、どうしても善人ぶってしまうんだ。
俺だって男だから、愛おしい人が目の前にいたらキスしたいし、抱きしめたい。

けれど、彼女の中の『矢吹 白杜』は、優しい先生のままかもしれない。
一万歩譲って、大人の男性という概念があったとしても、それこそ高校生のように速攻でがっつくような真似はできない。

あと一歩という所で、どうしても不要な理性が働いてしまう。
教師という職業柄だからなのか。
初めて会ったあの日から、あの瞳に囚われ、独り占めしたいという衝動を押し殺して来たからか。

彼女が見逃したという映画を動画ストリーミングで観る。
リビングの照明を少し落とし、雰囲気的にはいい感じなんだけど……。

「もう一本、持って来ようか?」
「あ、大丈夫です」

明日のフライトに支障をきたさないようにミネラルウォーターを口にする彼女。
ビールを誘ったことを後悔する。

「ごめんな、飲まして」
「え?……あっ、全然大丈夫ですよ?」
「……じゃあ、味が濃かった?」
「へ?」

ものの十五分程度で五百ミリのペットボトルを空にしてしまうほど、喉が渇いていたのか。
それともやはり、飲酒乗務が心配になって体内に蓄積する濃度を下げているのか。

手元に視線を落とした彼女がぼそっと呟いた。

「先生の家にお泊りするので、……緊張してしまって」