ドーンッ、ドーンッと太鼓のバチで強打されているかと思うくらい、花火の反響音が体に振動をきたす。
間近に大輪の花が咲き乱れ、マンションの他の住人達も見ているようで、拍手と歓声がどこからともなく聴こえて来る。
肩先が触れ合うほど至近距離にいる先生の気配と、自分の口から洩れるアルコールの吐息。
夏の夜にピッタリな必須ワードがこれでもかというくらい濃縮されている今。
花火の影響ではない心臓の震えに呑まれそうだ。
だって……今。
私の右手を先生が優しく握っている。
こういう時って、どうしたらいいんだっけ?
興奮と緊張のあまり、脳が思うように働かない。
……握り返したらいいの?
それとも、視線を先生に向けたらいいのだろうか?
ドーンッと花火が上がる度にビクッと体が震える。
あまりの迫力に慣れてない私は、花火に集中すべきか、先生に集中すべきか、それすらも分からなくて……。
物凄い速さで鼓動する心臓の音が、先生に聞こえてしまうんじゃないかと気が気でない。
静まれ……私の心臓。
握られる手にぎゅっと力が込められ、思わず無意識に視線が持ち上がる。
「……茜」
オフ仕様のさらりと垂れ下がった前髪。
その前髪の隙間から覗く真っすぐ見つめて来る黒々とした瞳。
スーッと通った鼻梁。
軽く結ばれた唇と、その右下にある色気のあるほくろ。
どのパーツも目を奪われるほど魅力的なのに、それらを凌駕してしまう艶気を帯びた声。
甘く痺れるその声に名前を呼ばれ、魂までもを射抜かれたように見惚れてしまう。
心地いい夜風に誘われるように、そっと唇が重なった。



