カマイユ~再会で彩る、初恋



目の前に差し出されたものを恐る恐る視界に捉える。
開かれたペールゴールデンロッド色したボックスの中央に収められた眩いばかりに光り輝く指輪が…。

『Van Cleef & Arpels』のロゴが目に飛び込んで来た。

世界五大ジュエラーの一つでもあるそのジュエルブランドは、モナコ皇室御用達でも超有名なハイジュエラーで、『ミステリーセット』と呼ばれる貴石のセッティング技法は、独自の特許技術で貴石を爪で留めない技法。
繊細な服を着たり、ストッキングを穿いていても爪部分が引っかかったりしない、世界唯一無二の技法が施されたジュエル。

その特殊技術で作られたというだけでも希少価値があるのに、今目の前にある指輪は、息を呑むほどの輝きを放っている。
ラウンドカットされた大粒のダイヤが一列に配置され、その両サイドにも繊細に施された無数のダイヤがあしらわれている。

一体幾らするんだろう?

数年前に初めてフランス便の乗務をした際に、先輩CAに誘われ本店に足を踏み入れた。
格式高いお店なのだけれど、可愛らしい『花』や『蝶』をモチーフにしたピアスやブレスレットが人気で、ついつい時間を忘れて見たっけ。

あの時何気なく見ていたアクセサリーとは格が違う。
見るからにハイクラスで、庶民が見ることさえできないような代物だ。

視界に映る、ガラスの靴と不動産契約の締結書類と警備員が傍にいてもおかしくないほどの高価な指輪。
異次元すぎて脳が思考を放棄したらしい。
どうしたらいいのか、何て言えばいいのか。
我が身に降りかかる全てが呪文のようで、ぴくりとも動かない。

先生。
王子様じゃなくて、これでは魔法使いです。