カマイユ~再会で彩る、初恋



弱火で数時間煮込んだビーフシチューは頬っぺたが落ちてしまいそうなほど美味しくて、ついつい夢中で平らげてしまった。
先生が選んでくれたのは金色の星マークが目印の地ワイン。
コクと程よい渋みが味わえる赤ワインで、お肉に凄く合う。

「少し部屋の灯り落としてもいいか?」
「あっ、はい」

足下にランタンを置いた先生は、リビングの照明を落としに行く。
すると、室内の灯りの代わりに夜空に満天の星空が視界に入って来た。

「凄~~~いっ!!」

思わず発狂してしまうほど、見渡す限りの夜空に無数の星が浮かぶ。

「ここは、『日本一の星空の村』として有名なところなんだよ」
「へ?」
「環境省お墨付きの星空の村らしいよ」
「へぇ~そうなんですね!」

ロープウェイで空中散歩もできるらしくて、明日の夜に天気がよければ二人で行くことになった。

「この方角に一際明るい星が見えるか?」
「……幾つか光ってますよね?」
「四角に見えるのが、秋の四大辺形と呼ばれるやつだよ」
「四大辺形?」
「春夏冬は大三角形が有名だろ」
「あぁ、小学校で習いましたよね」
「秋だけ、それが見えない代わりに四大辺形が浮かび上がるんだ」
「……秋だけ?」
「こうして見られるのも、今だけ」
「凄い」

幾つもの数ある星の中で、同じ星を観る。
同じ空間で同じ時間を同じものを見て過ごす。
ただそれだけなのに、先生と過ごす時間は何物にも代えがたい特別なもの。

「さっき描いてた絵は、どうして一色しか使わなかったんですか?」