カマイユ~再会で彩る、初恋



恋人と別荘で過ごす贅沢な連休。
夏休み直後だというのに、有給を使ってまで時間を共有したいと思えるほど、彼女の存在は大きい。

教職という立場を捨ててもいいとさえ思えるほど、今の俺の中では最優先事項になっている。

母親と母親方の祖父母が遺してくれた財産だけでも遊んで暮らせる。
教師生活をしながら、描き溜めた絵画を数年に一度個展を開き、そこで売った収入もある。
絵描きとして生活していくことも可能だし、働かなくても衣食住には困らない。
それだけの預貯金はある。

彼女と結婚して家庭を持つならば、彼女に似た可愛い子供は欲しいし、そうなれば父親として働いてない背中は見せれない。

一人で生きてゆくと決めていたから、この歳になって初めて考えさせられる。
『五十嵐 茜』という女性と歩んでゆく人生の在り方を。



パスタの美味しい店で昼食を済ませ、スーパーで食材を買い込んで別荘に戻った。
部屋の掃除等は契約している管理業者の人が定期的にしてくれていて、滞在予定の連絡を入れておくとシーツなども綺麗に交換しておいてくれる。

彼女がビーフシチューが食べたいというので、阿智(あち)黒毛和牛を沢山買い込んで来た。
残ったものは明日ステーキにしようと思って……。

「あっ、ワインはワインセラーに」
「あるんですか?」
「うん、キッチン脇にある引き戸を開けると中にあるよ。管理業者の人に通電頼んでおいたから使えるはず」
「ッ?!!」

買って来た食材を片付ける彼女は、俺の言葉に驚愕した。
そんな可愛い彼女の反応を楽しみながら、ビーフシチューの仕込みをする。