「食べれそうか?」
「………はい」

手際よく雑炊を作ってくれたようだ。
美味しそうな匂いに、お腹がキュルルッと鳴った。

「ハハッ、お前の腹は馬鹿正直だな」
「っ……」

恥ずかしすぎて、今すぐ消えたい。
酔い潰れて吐いて、ぐでんぐでんの状態でしがみ付いて。
挙句の果てに朝ご飯まで作らせて……。

もう二度と会えないよ。

「冷めないうちに食べて」
「……はい。戴きます」
「そう言えば、五十嵐、ASJのCAなんだな」
「……はい」
「英語、得意だったもんな」
「……」
「お前に合ってるんじゃないか?」
「……そうですかね」

味なんて分からない。
呼吸すら、し辛いのに。

恥ずかしくて顔が上げられない。
とりあえず、早いところ食べて、家に帰ろう。
さすがに気まずすぎる。

「渡瀬と付き合ってるのか?」
「ッ?!」

頬杖をついて、真っすぐ見据えて来る先生。
突然何を言い出すかと思えば……。

「あ……」

そうか。
たぶん、先生を佑人と勘違いして、口にしてたんだ。

「付き合ってませんよ。北川千奈ちゃんと萩原隆くんと、渡瀬佑人くんは当時から仲がよくて、今も飲み友達です」
「……そうか」
「千奈ちゃんが一次会で帰ってしまって、荻原くんは女の子に夢中で。渡瀬くんくらいしか、話せる人がいなかったから」

私が人付き合い苦手なのは知ってるはず。
通知表の担任の欄に『もう少し社会性がとれると◎』と記されていたくらいだ。
もう忘れてるかもしれないけれど。

そう言えば、……先生、婚約者がいたはず。
毎日大事そうに首にぶら下げていた指輪の相手が。

でも、どう見てもこの部屋、一人暮らしだよね?
というより、私がここにいてもいいんだろうか?