私は魔王!

「ねぇブレイブ?早く魔王討伐に行きましょうよ。」

くねくねと体をしならせ、一見清楚、しかし中身は腹黒の聖女マリアンヌが潤んだ瞳で訴える。

「あーやだやだ、なにその媚び。見てて気持ち悪いったらありゃしない。」

肌面積がおかしい服を着た、豊満なナイスバディーの女性が反対側を取る。

「もう!ミランダ!ブレイブにくっつきすぎよ!その目障りな胸を仕舞いなさいよ!」

「ちゃんと服は着てるわ。」

「その牛みたいな下品な胸をブレイブにくっつけないで!」

「あらぁ、聖女様の慎ましやかなそのお胸じゃくっついてても何も感じないわね。」

「何よー!牛女!!」

「ふんだ!貧弱小娘!」

自分の両側で、いつもの不毛な戦いが起こっても、勇者ブレイブはじっと考えていた。

「これこれ、二人とも。いい加減にやめないか。みっともない。」

「「デンは黙ってて!!」」

息の合った口撃に、仲裁をしようとした剣士デンは閉口した。

とある宿屋の一室。
勇者パーティーの拠点である部屋には、聖女、スカウト、剣士が集まり、魔王討伐の作戦を練っていた。
そこへ黒いローブを着たヒョロヒョロな男が入ってきた。

「遅れてすいません。やっと購入できました。」

テーブルの上に、古びた羊皮紙を置いた。

「ランバード、これは?」

「はい、禁呪の巻物です。古道具屋で見つけました。」

青っちろい顔をクシャっとさせ、笑顔で報告する、魔術師ランバード。

「禁呪って…そこら辺で売ってるものなの?」

怪しげに手に取るミランダ。
見ると、所々切れ目が入り、薄茶色したヨレヨレの羊皮紙である。

「大丈夫なんですか?なんだか汚い…」
「紛れもなく本物ですよ!魔力探知してから買いましたから。」
「で、いくらで?」
「1500バールです!」
胸を張って誇らしげにランバードが言う。

「1500バールって……安すぎない?」

この宿屋の一泊が300バールほど。
ちなみに宿屋としては中の下である。

「もしかして、そのお金は…」

「はい!支度金から出しました!ね!お買い得だったでしょ!」

バコーン!とランバードは二方向からどつかれる。

「バッカじゃないの!あのケチな王様がやっと出した支度金なのに!そんなに使っちゃってどうすんのよ!!」

「ひどいです、それじゃあしばらくお風呂にもいけないじゃないですかぁ。」

「だって、禁呪でもなければあの魔王に勝てないじゃないですか。あの魔力を無効化しないことには、勝算はないですよ?」

涙目でランバードは言う。

沈黙が漂う。

「ねえ、ブレイブ?どう思う?」

先程からじっと何かを考えていた勇者ブレイブ。
仲間の問いかけにも答えず、じっと一点を見つめていた。

それを見守る仲間達。

「………………………可愛かったんだ。」

ボソッと呟いた言葉はあまりにも小さく、仲間の耳には届かなかった。