本音を言えば、いつか倫也を誰かにとられてしまうぐらいなら、理由なんて何でもいいから、ファーストキスの相手は倫也がいいし、倫也にとっても同じだったらいいのに…と思う。

そう思う反面、やはりファーストキスがそういう形であることに抵抗もある。

私も倫也も、プロの役者でないのは言わずもがな、演劇部員ですらないのだ。

だから、倫也に嫌なのかと聞かれても、どう答えていいのかわからなくもなる。

「唯、危ないよ」

急に強く腕を引かれ、思わずドキッとする。

私があれこれ考えながらフラフラ歩いていたら、後ろから勢いよく走ってきた自転車にぶつかりそうになった。

「あ…ありがと」

「どうしたの?何か考え事でもしてるみたいだけど」