「華恋、どうした?」

 手の辺りを見ながらいつも通りの感じで彼は話しかけてきた。

「あのね、指包丁で切っちゃって……」
「まじか、見せてみろ?」

 左手を彼の前に出すと、彼は私の人差し指を優しく握り、まじまじと見つめていた。

「痛いか? 大丈夫か?」

 怪我した時とか、いつもいっぱい心配してくれるな――。

「神谷くんあのね、さっきの話……」

 私が言いかけた時、先生が戻ってきた。

「絆創膏、あったよ!」

 先生が持っていた絆創膏を神谷くんは取りあげた。

「俺が貼る」

 さっきまで元気がなかったのが嘘みたいに、テキパキと動く神谷くん。


 絆創膏を指に巻いてくれている様子を私はドキドキしながら見つめた。

「よし、出来た」
「あ、ありがとう」

「あ、俺、ただ水飲もうと思ってここに来ただけで、何にも話聞いてないから」

 そう言いながら彼は視線を私からそらした。