「わっ、ごめん! 華恋ちゃん、大丈夫?」

 私が自分で指を切ったのに、ひまりちゃんがなぜか謝ってきた。
 
「うん、ちょっと切れただけだから大丈夫」

「先生、絆創膏とかありますか?」

 ひまりちゃんが聞いてくれた。

「絆創膏、どこだろ……多分元受付だった場所あたりに救急箱があった気がする。先生、探してくるね」

「華恋ちゃん、私が変な質問したからだよね? ごめんね?」
「ううん、変な質問じゃないよ。だってその通りだから」
「えっ? 華恋ちゃん、神谷くんのことを!?」
「うん、そうなの。実はね――」

 私はひまりちゃんに気持ちを打ち明けた。こういう気持ちを人に言ったのは初めてで、言葉にすると改めて私は、神谷くんのことが好きなんだなって実感する。

 長くてひっそりとした、片想い――。

 その時だった。

「あ、神谷くん」

 廊下に出ようとした先生が彼の名前を呼んだ。
 私は勢いよく振り向く。
 そしたら彼が入口に立っていた。

 ――えっ? もしかして、今の話、神谷くんに聞かれた?