俺が気持ちを伝えると「わぁ、本当に? どうしよう、なんか照れる」って言いながら華恋は下を向いた。

「華恋も、俺のこと……」
「うん、好き」
「いつから?」
「いつからって、もう昔からだよ」

 じゃあ、ずっと両片想いだったってことか?

「そうだったんだ……」

 下を向いたままの華恋を見つめた。

 照れてる華恋も可愛い。
 華恋の全てが可愛い。

 彼女に見とれていると、鈴の音が再び聞こえた。
 同時に華恋の後ろを人が横切った気がした。

「ねぇ、今また鈴の音聞こえた?」

 華恋が顔を上げた。

「うん。しかも今……」

 俺は立ち上がって改めてその何かが横切った方向をみた。

「すごい真剣な顔して、どうしたの?」

 ひとりひとりの様子を見てまわっていた先生が声をかけてきた。

「俺たち、鈴の音が昨日から聞こえてて、今も何か、あっちの方で……」

「鈴の音……ネコちゃんかな?」
「猫? でも今人間だった気がしたけど」

「昔まだここが旅館だった時にね、ここで飼っていた猫なの。もう亡くなっちゃったけどね。ネコちゃんが亡くなったのと同時にその子がよく遊んでいた鈴入りボールもなくなったらしくて……」

「じゃあ、その子なのかな? 今もお気に入りのボールを持ってて、姿を変えたりして遊びに来てるのかな?」

 華恋が呟いた。

「そうかもね。ここがまだ旅館だった頃に泊まりに来てたお客さんも鈴の音を聞いたらしいし。中には猫耳が生えてる人の幽霊を見たって目撃談も……」

 話を聞くと怖さはなくなっていった。