「さっきの音とか、なんだったんだろうね?」
「誰もいなかったし、気のせいかもな」

「昔から思ってたんだけど、神谷くんって怖いものとかなさそうだよね?」
「怖いもの?」
「うん。なんか年上の人とも堂々と?喧嘩したりしてるし、今だって、幽霊とか全く怖くなさそうだし……」

「……いや、実は幽霊、怖い」

 神谷くんはすごく小さな声で呟いた。

「そうなの?」
「もう、幽霊は小さい時からめちゃくちゃ苦手。テレビとかスマホの画面にそんな映像とか出てきたら、速攻消すもん」
「でも、今も堂々としてるし。そんな感じしないな」
「それは……」
「それは?」
「……華恋がいるから」
「私?」
「そう。なぁ、華恋」

 暗さに慣れて、うっすらと彼が見える。
 彼が真剣な顔をして、じっと私の瞳を見つめてきた。

「実は俺、華恋の話、聞いちゃったんだけど……」
「えっ?」

 動揺して、今かくれんぼ中なのに大きい声を出してしまった。

 すぐにどの話なのか分かった。
 他のことをしつつも「聞かれた?」「聞かれてない?」って頭の中でずっとぐるぐると考えていたから。

 そう、神谷くんのことが好きって話。