「今の……」

 どうしよう、本気で怖くなってきた。

「華恋、とりあえずここに隠れよう」

 私たちが隠れたのは玄関の近くにある受付カウンターの陰。しゃがんでひっそりと身をひそめた。

「ねぇ、今、鈴の音が……」
「あぁ……」

 ガラガラガラ

 その時、何か音がした。

「今、玄関の引き戸の音しなかった?」
「した。ちょっとだけみてくるから、ここでじっとしてて?」
「えっ? 見に行くの?」
「うん、怪しい人来たかもしれないし、泊まってるみんなに何かあっても嫌だし」
「もしかして幽霊って可能性も……ひとりで大丈夫?」
「華恋を危険な目に合わせたくないから、本当にここでじっとしてろよ!」
「うん、分かった」

「これ、一応置いていくから」
 懐中電灯を置いて彼は様子を見に行った。

 ガラガラともう一度音がした。

 もしかして神谷くん、外に行った?

 神谷くんが目の前からいなくなってひとりになると、不安が一気に押し寄せてくる。

 でも、それよりも、神谷くんが心配。
 神谷くんに何か嫌なことがあったら――。

 それに、懐中電灯置いていってくれたけど、暗くて何も見えないんじゃないかな?

 私はそっとカウンターから顔を出してみた。

 なんの気配もない。