高校2年生の夏休み。
 今日は写真部の合宿の日。

 2泊3日の予定。
 

 青空の中、8人の部員と先生は地元の駅から電車で約1時間、舗装されてない砂利道を約30分ぐらい歩いて泊まる場所についた。

 目の前に見えるのは、辺り一面に広がる自然色の風景と溶け込むような、大きくて古めな和風の建物。
 
 写真部の顧問、三嶋先生の叔父さんの別荘らしい。

「ここね、私の叔父さんが昔経営していた旅館だったんだけど」

 そう言いながら先生はショルダーバッグの中にある、じゃらじゃらと沢山キーホルダーのついている鍵を取りだした。

「この辺りの景観いいから小さい頃からよく写真撮りに来ていてね、みんなにもぜひ!って思って……」

 先生が玄関の引き戸を開けると、カビのようなにおいが、もわっと外に流れてきた。

 まだ昼なのに明かりがついてないと、室内がすごく薄暗い。ちょっとなんか、お化けとかでそうだなぁ。

「ねぇねぇ、神谷くん。ここ、お化け出そうでない?」

 横にいる神谷くんにこっそり話しかけたけれど、返事がない。

 彼は私の幼なじみで、気が強いヤンキー。
「部活なんて、興味ないから絶対に入らねぇ」って言っていたけれど、私が写真部に入部するって言ったらなぜか一緒に写真部へ。

 ちらっと彼の顔を見ると、彼は眉間にしわを寄せながら中を見つめていた。

 神谷くん、ちょっと震えてる?
 暑いけど寒いのかな? 風邪?