修行一日目。
 本日の保護役はセナだ。彼は週の四日も付き添ってくれることになっており、とてもありがたい。

 高さ四メートルもある樹齢千年の神木。みずみずしい葉が揺れ、太い幹をしている。そして、神秘的な佇まいだ。この木には神が宿っているとされ、長らく祀られている。

 神木の根元で、三十分間瞑想する。芝生の上に座り力を抜いた状態で目を閉じる。ただ楽に鼻から息を吸って、口からゆっくりと吐き出す……の繰り返し。あらゆる雑念を取り払い、心を無にするのが重要だ。

 爽やかな風が頬を撫で、小鳥たちのさえずりが鼓膜を震わす。オリアーナはその瞬間の心地良さに身を委ねた。オリアーナの隣でセナも瞑想している。三十分の瞑想を終えて、瞼をそっと持ち上げた。

「もう三十分経ったよ、セナ――」

 すると、隣で瞑想をしていたセナが眠っていた。

(寝てる……)

 薄い唇を僅かに開き、規則的な寝息を立てるセナ。その姿が無防備で、どこか色っぽくて、なぜかどきどきする。唇に髪が入ってるのを見てそっと手を伸ばす。

「ふ。髪、食べてるよ」

 小声でそっと囁き、彼の頬に手を添えた刹那。セナがその手を自分の手で上から握り、瞼を持ち上げた。長いまつ毛が縁取る美しい瞳と視線がかち合う。彼は眉尻を下げて呟いた。

「夢の中にまで出てくんのな。お前」
「夢……?」

 どうやら彼は、ここを夢の中だと勘違いしているらしい。すると、あろうことか彼はオリアーナの手を口元まで運び、ちゅっと手の甲に唇を落とした。

「〜〜〜〜!?」

 オリアーナは真っ赤になって固まる。