入学式当日。オリアーナは真新しい制服に身を包んで学校へ向かった。すると、街道のど真ん中で、突然目の前に女の子が近づいて来た。

「……好きです! 一目惚れしました……! 私と付き合ってください!」

 少しだけ目を瞬かせたあと、申し訳なさそうに眉をひそめるオリアーナ。

「まずはありがとう。とても嬉しいよ。けどごめん。君の気持ちには応えられない」
「そう……ですか」

(ちなみに私……女なんだよね……)

 ……とは、口が裂けても言えない。なぜなら自分は今、男のフリをしなければならないから。恐らくオリアーナのことを男だと勘違いして告白をした少女は、しゅんと肩を落とした。
 オリアーナは――レイモンドとして笑顔を向ける。

「僕はレイモンド・アーネル。君は?」
「わ、私は……リシェールです」
「清廉な名だ。君にとてもよく似合う。恋人にはなれないけど、友だちとして仲良くしてくれるかな?」
「はい……! ぜひ……!」

 オリアーナが優美に微笑むと、リシェールは瞳にハートを浮かべながら頷いた。

「それじゃ、またね。リシェール」
「はいっ、レイモンド様っ!」

 爽やかに手を振って踵を返す。リシェールは頬を朱に染め、とろんとした表情でその後ろ姿を見送った。
 石畳の広い街道は、沢山の店が軒を連ねており、大勢の人々がひっきりなしに往来している。女も男も、通りを颯爽と歩く魔法学院の制服を着たオリアーナに目を奪われた。