長い夢から覚めて瞼を持ち上げると、見慣れた天井があった。

「おはよう、レイモンド」
「セナ……? なぜここに……」

 寝台の傍らでセナが本を読んでいた。確か、魔力の暴走を起こして気絶したのだった。意識を手放す直前、オリアーナが祝福魔法を唱えてくれたことを覚えている。そのおかげで身体がふっと楽になったのだ。

「昨夜は大変だったみたいだな。リアから聞いた。身体の調子は?」
「随分楽になりました」
「そう。ならよかった。今日は昼過ぎにエトヴィン先生が来られるから。それまでお前に付いているようにリアに頼まれたんだ」
「……そうですか」

 オリアーナは基本、誰かを頼ったりせずに自分一人で解決しようとする。そんな彼女だが、セナにだけは心を許していて、甘えたり頼ったりする。

「お前さ、隠してることあるなら全部吐けよ」
「……」
「お前もリアも、なんでも自分で抱え込みすぎ。お前が周りに気を遣って隠し事したって誰も喜ばないから。俺だって……お前がいなくなったら――困るし」

 レイモンドは天井を見上げながら、小さく息を吐いた。半身を起こして、サイドテーブルに置いた眼鏡に手を伸ばす。眼鏡をかけてから呟いた。

「恐らく、姉さんが本来持つはずだった魔力核が僕の中にあります。僕が天才と言われてきたのは、始祖五家二人分の魔力を行使できたからでしょう。魔力核は目に見える器官とは違いますから、治療不可能です」