「レイモンド。夕食を持って来たよ」

 オリアーナは夕食が載ったワゴンを押して、レイモンドの部屋に入った。

「ありがとうございます、姉さん」

 そう言ってレイモンドは、身を起こした。寝癖がついた長い髪を手で梳く彼。

「あのさ、レイモンド。明後日会ってほしい人がいるんだけど」
「誰でしょうか」
「学校で……魔法医学を研究されているエトヴィン先生」
「エトヴィン・ジール教授……。魔力核の専門家ですね」
「知っていたんだね。そうだよ。とても優秀な方だなら、きっと君の力に――」
「結構です」
「え……」
「視ていただかなくていいとお伝えください」

 せっかくの提案をぴしゃりと撥ね除けられ、オリアーナはぎゅっと拳を握り締めた。

「もう全部、分かってるんだよ。レイモンドの具合が悪くなったのは……お母様のお腹の中で、私と君の魔力核が結合して君の方に入ったからだって」
「…………」
「だから、隠しているんでしょ。私がお母様たちに責められないように……。負い目を感じないように」

 レイモンドはスプーンを皿の上に置いて、冷静に言った。