改めて熊を見下ろすと、首の断面から白い綿が溢れ出していた。切ったときの手ごたえは鉄のように硬かったが、内部は本物のぬいぐるみみたいだ。

 無事に敵を倒し終えると、二人の視界が歪み、元の鍛錬室に転移していた。すると、エトヴィンが若干引いた様子で言った。

「俺は長いこと教師をやってきたが……この試験で、高難度の敵を剣一本で倒した生徒は初めて見たぞ」

 ざわり。エトヴィンの言葉に、生徒たちがどよめいた。「さすがは始祖五家だ」とか「殿下が歴史を作った」などともてはやす声があちこちから上がる。エトヴィンが他の生徒たちに聞こえないように小声で言った。

「お前。本当に女……いや人間か? 熊と怪物のハーフとかじゃ、」
「先生がおっしゃるならそうかもしれませんね」

 オリアーナは彼の冗談を、にこりと笑って嫌味なく受け流した。

 結局。この試験では、セナの援護魔法は評価されたが、オリアーナの戦い方は危険極まりないと減点された。そもそもこのテストは魔法の応用能力を測るもの。剣だけで戦おうと考えるのはありえないそうだ。

 先生からの評価は低かったものの、生徒たちは上級レベルの敵を魔法を使()()()()()()()倒したオリアーナを英雄視し、一層憧れを抱くようになったのだった。