レイモンドが口を利いてくれなくなったまま中間試験を迎えた。試験は五日間に渡って行われ、三日目までは筆記、残り二日間は実技となっている。
 今日は四日目。真面目なオリアーナは一切抜かりなく勉強して挑んだため、筆記は手応えがある。問題は今日の実技だ。

「大丈夫? レイモンド」
「自信はないけど、やれるだけやってみるよ」

 魔法を自由に発動できる鍛錬室。四日目はここで祝福の魔法を唱え、魔力量の検出を行い、先生たちから評価点をつけてもらう。

 オリアーナは、制服の内側に忍ばせた守護石を握り締めた。彼女は魔法の発動に関して全てをこの石に依存している。何度も練習してきたが、レイモンドのように一番を取れるほどの威力はない。

(せめて平均は上回らないと、アーネル公爵家として面目が立たないな)

 受験番号順に試験が行われていく。ジュリエットが最初で、一段高い場所に立った。彼女はどうやら筆記ですでに四科目追試が確定しているらしいが、実技に関しては――文句の付けようがない実力がある。


 《――火の祝福(ブレッシング)!》


 長い杖を下から上にひゅっと振り上げる。いつになく真剣な眼差しだ。詠唱と共に、杖の先に炎が現れる。その火は、上へ上へと旋回していく。オリアーナたちの元まで熱気が伝わり、辺りが明るくなった。

「もう結構ですよ、エドヴァールさん」
「はい」

 今日の試験官はマチルダ。彼女に促され、ジュリエットは杖を片手に持ち変え、もう片手で拳をぎゅっと握った。直後、炎は消失した。