レイモンドは、夕焼けに染まる窓の外の景色を、寝台の上に座ってぼんやりと眺めていた。植木や芝生も、色調豊かな花壇も、オレンジ色の光に包まれている。


 《――光の祝福(ブレッシング)


 そっと人差し指を伸ばして呟けば、光でできた蝶が現れ、ひらひらと窓の外に飛んでいった。蝶は、繊細な光の粒子を撒きながら舞う。

「相変わらず、お前の魔法は緻密で綺麗だな」
「ありがとうございます。――セナ」

 今日は学校帰りに、セナが見舞いに来てくれた。彼はレイモンドが作り出した蝶を目で追いながら感嘆の息を漏らした。セナとは幼馴染で、気の置けない友人でもある。
 彼はオリアーナの身代わり入学を一番に見抜いていた。

「姉さんの学校での様子はいかがですか?」
「想像通りだと思うよ。リアはどこに行っても不思議と人に好かれる。……『殿下』なんて呼称までつけられてるし」
「――不思議と、ではありませんよ。彼女が慕われているのは必然。そういう資質を持って生まれたんです」
「資質?」