リヒャルドから宣戦布告(?)を受けてからというもの。他クラスとの合同体育の時間が決戦の場になり、幾度となく勝負を挑まれている。

「レイモンド。今日はやけに元気ないね」
「いや……ちょっとね……」

 心配そうにこちらの顔色を窺うセナ。オリアーナを悩ませているのは、勝負をしつこくふっかけてくるリヒャルドのことだ。

「おいレイモンド! 今日こそ決着つけるぞ!」

 体育着姿で、意気揚々とこちらに駆け寄って来たリヒャルド。オリアーナが困惑していると、セナが呆れたように息を吐いた。

「リヒャルド王子も懲りないよね。前回の長距離走もその前のボール投げも物の見事に完敗だっただろ?」
「うぐっ……で、でも今日は剣術だ! 俺は剣の腕には自信があるんだ」
「……俺、レイモンドが剣で負けたとこ見たことないけど。レイモンドに戦いを挑みたいなら、軍隊でも連れて来ない限り厳しいと思うよ」
「軍隊」

 セナが言う、負けたことがない剣士とはレイモンドではなく女のオリアーナの方だ。本物のレイモンドは、純粋な運動神経ではオリアーナに劣る。

(今日はちょっとだけ手加減しようかな)

 連敗ばかりでリヒャルドが気の毒になってきて、ぼんやりとそんなことを考えていると、リヒャルドがそれを見透かしたように言う。

「お前。手抜きとかしたら許さないからな」
「……分かり、ました」



 ◇◇◇