「あのっ……殿下! これよかったら食べてください……! 頑張って作ったんです……!」

 ある日の午前の講義終わり、教室でオリアーナのところに行列ができていた。

「ありがとう。これは……クッキーだね。熊に猫……こっちはうさぎかな? 可愛くて食べるのが惜しいな」
「そ、そんな……っ。もったいないお言葉です……っ」
「あとでいただくね」
「はいぃ……」

 恒例――殿下への貢ぎ物の時間だ。
 オリアーナは、愛想よく微笑みながら手作りクッキーが収められた箱の蓋を閉じた。
 相手の女子生徒の方は、うっとりとした表情で頬を朱に染めた。

 最後の女子生徒を見送り、オリアーナは息を吐いた。

(みんなの気持ちはありがたいけど……持ち帰るのが大変なんだよね)

 机を埋め尽くす贈り物の数々。食べ物に関しては、屋敷の使用人たちに分けたりしている。そんなオリアーナの隣で、ジュリエットが両頬に手を添え、恍惚とした表情で呟いた。

「相変わらずの人気ぶりですわね、オリアーナ様。わたくしも、皆様に負けないように精進いたしますわぁ……!」
「ジュリエット。君は少しは――自重しよっか」

 ジュリエットをいぶかしげに見つめる。