彼の言葉をそのまま素直に受け取り、にこりと微笑みを返した。

「うん。私もセナが好きだよ」

 にこにこと能天気に笑うオリアーナを見て、彼は不服そうに眉を寄せた。

「リアの好きと俺の好きは……違うよ」
「好きな気持ちに違いなんてないでしょ?」

 きょとんと首を傾げると、彼はまた呆れたように小さく息を吐いた。そして、苦笑を浮かべながら「そうだね」と言った。

「それにしても、面倒なことになったよね。『殿下』なんて呼ばれてさ。好いてもらえるのはありがたいし、嫌って訳じゃないけどね。王子の次は聖女と来た。忙しないよね」

 人前を歩けば女子は黄色い歓声を上げ、男子たちでさえ羨望を抱く。
 ロッカーを開くと雪崩のようにファンからの手紙や贈り物が落ちてきて、机の中にもいつも貢ぎ物が詰まっている。歩いているだけでサインやら握手を要求され、王子扱いされるのは結構疲れる。

「王子役に辟易したら、俺が姫にしてあげるけど」
「ふ。何それ。私は王子でいいよ。姫って柄じゃないし」

 セナはずいとこちらに詰め寄り、顔を覗き込んできて、甘く囁く。

「そう? リアは結構、可愛らしいとこあるよ」