「さ、お席にご案内いたしますわ。レイモンド様のお席は、わたくしの隣です」
「ありがとう、助かるよ」

 オリアーナはジュリエットと並んで着席し、他の生徒に聞こえない声で耳打ちした。

「ジュリエット。よく私だって気づいたね。さっきセナに認識操作の魔法をかけてもらったんだけど」
「ふふ、愛の力ですわ」
「はいはい」

 ジュリエットは決まりよく目配せをした。
 彼女の先程までの振る舞いは、オリアーナをオリアーナと認識してのものだ。なぜなら彼女は昔から、レイモンドではなくオリアーナだけに執心しているから。
 しかし、セナの魔法を看破するとは、さすがは始祖五家の令嬢だ。

「レイモンド様の体調……よろしくないのですね」
「……うん」
「事情は察しました。わたくしは、全面的にオリアーナ様に協力いたしますからね……!」

 彼女は得意げに親指を立てた。
 協力を得られたのは心強いが、入学して早々二人に正体をバレてしまうなんて、この先が思いやられる。