暑さがおさまる夏の終わり。
 オリアーナの聖女の任命式が大聖堂で行われ、大神官から冠を授けられた。美しい聖女の装いをしたオリアーナが跪き冠を被せられる姿に、参集者たちは息を飲んだ。

 厳かな雰囲気の式が終わったあとは、上位貴族たちとの顔合わせのために夜会が開かれる。

「ねぇ、やっぱりこれ、似合わないんじゃない……かな?」

 控え室でオリアーナはジュリエットに尋ねる。彼女はぶんぶんと顔を横に振った。

「いいえ、いいえっ、最っ高〜〜〜〜ですわ!」

 ジュリエットは瞳をきらきらと輝かせ、両手を祈るように組んで顔を近づけて来た。
 今日のオリアーナは、美しく着飾っている。

 ドレスは藍色を基調としていて、花柄のレースが幾つも重ねられている。胸元はVネックでデコルテが覗き、背中も肌が晒されている。ウエスト部分には宝石のビーズで華やかに装飾が施されている。

 オリアーナには珍しい、女性らしいデザインのドレスだ。久しぶりのスカートやヒールが慣れない。

(足元がなんだかすーすーする……)

 上品なドレスに身を包んだオリアーナは、まるで絵画の女神のようだと支度を手伝った使用人たちにも賞賛された。

 ガチャりと扉が開き、セナが入ってくる。

「…………!」

 ドレスを着たオリアーナを見るやいなや、セナは目を見開いて固まった。

「変……かな」