「よし、オリアーナ嬢。どっちの方が精霊を見つけられるか勝負だ!」

 修行四週間目。精霊を扱う技術は磨かれ、魔力核移植に向けての仕上げの段階に入っていた。
 今日の保護役は――リヒャルド。彼は修行の際もやたらと張り合ってこようとする。負けず嫌いで闘争心が強いのは、レイモンドに対してだけではなかった。

「……十二体、かな」

 オリアーナが神木の周りを浮遊する精霊を数えて答えた。

「俺には小っこいのがあと三体見えるぜ。俺の勝ち! はははっ、まだまだだな!」
「はい。まだ王子には敵いません。完敗です」
「そうだろうそうだろう!」

 煽てると、彼は気分が良さそうに鼻を鳴らした。彼は単純なので扱いが楽でいい。すると、リヒャルドは大人びた表情で精霊たちを見上げて囁いた。

「――愛おしいな。精霊は」
「愛おしい?」
「ああ。どこまでも自由で、あるがままにたゆたっているだろ? 人にはエゴがあるが、精霊たちは愛のまま存在していて……その無垢さが……愛おしいんだ」

 リヒャルドは王族として、ギスギスした身分社会の中を生きている。彼は飄々としているように見えて、意外と物事をよく見ている。悟ったような彼の表情は、年不相応だった。