セナは立ち止まり、真顔でこちらを見下ろした。
「あの子の気持ちに応えたとして、ほんの少しも嫌じゃない?」
「…………」
もし、セナが彼女の告白に応えて、恋人になったら。想像しただけで胸がぎゅっとなる。
(セナが幸せならそれでいいって、決めたばかりなのに……駄目だな。少し……いやかなり――嫌だ)
友人ならば、「大丈夫」「平気だよ」とここは答えるべきだろう。でも、嘘がつけない。顔に出てしまう。ポーカーフェイスは得意なはずなのに、セナのことになると急に下手になる。泣きそうな顔を浮かべながら、セナの服をちょこんと摘んで弱い声を絞り出す。
「誰にも――取られたく、ないかも」
「…………!」
すると、彼は藍色の瞳を見開いて固まった。まるで、オリアーナの返しが想定外というように。オリアーナも、弾みで口を衝いて出てしまった言葉にはっとして、顔を赤らめる。
「ごめん、今のは……忘れて」
「…………」
オリアーナは頭が真っ白になって、その場から逃げ出した。
一方セナは、一人でその場にしゃがみこみ、両手で顔を覆う。
「何あれ、反則……。あーもう、ちょっとやばいかも」
セナの心は最初からただ一人のものだ。彼女がもしも望んでくれるなら、本当に何もかも全部捧げたっていい。そんな風に思うセナだった。
◇◇◇



