オリアーナは、自身が注目されていることなどつゆ知らず、物憂げにため息を吐く。
一方で、絶世の美男子は零れる息さえも美しいと、それを眺める者たちは感嘆した。
(参ったな……。これで今日は四度目だ。入学式、間に合うかな?)
しなやかな指を折り数えたのは――今日告白された回数。ちょっと家を出たらすぐこうなってしまうので、おちおち通学もできない。一度目は花屋の店員。二度目はパン屋の夫人、三度目は大きな荷物を抱え腰の曲がった老婆だった。そして、四度目はすれ違っただけのあの少女だった。
(こんな調子で、レイモンドが復学できるまで、目立たず平凡にやり過ごせるかな)
しかし、『目立たず平凡』はオリアーナが最も苦手とすることだ。オリアーナはこれまでも無自覚に人を魅了し、注目を浴びてきたのだから。
そして。入学したあと、彼女には平凡とはいいがたい学院生活が待っていた。