スーツ姿の強そうな男の人が部屋に集まり畳にずらーっと正座していると、かなりの圧迫感があった。


みんなどうして集められたのか不思議そうにしている。


「突然招集して悪かった。今日は私から大事な話がある」


この場にいる全員が息を呑む音が聞こえた。


「まずは愛華のことだが、知っての通り縁談の話は断った。そして……これからは(かなめ)との仲をどうか見守ってやってくれ」


おじいちゃんが話をした瞬間、歓声に近い祝福の声や拍手の嵐が巻き起こった。


こうして大好きなみんなに祝ってもらえるのがこんなに嬉しいことだとは思わなかった。


紺炉に倣って私もみんなに頭を下げる。


たまたま目が合った相模も拍手をしながら口パクで「おめでとう」と言ってくれた。


なんだか嬉し恥ずかしくて、紺炉と目を合わせて思わず笑ってしまった。


「そしてもう一つ。五十嵐組の今後の話だ」


和やかな雰囲気が再び緊張に変わった。


おそらく若頭、つまり次の五十嵐組組長が誰かという話だ。


この流れで行くと紺炉が引き継ぐことになるけれど、順番的な意味では相模が組長になるのが筋だ。


別に誰がなっても反対する人なんていないとは思うけれど……。


けれど、おじいちゃんの話は想定外の内容だった。


「・・・五十嵐組は私の代で終わりにする」

 
しばらく時が止まったかのようにその場の全員が固まった。


誰もが自分の耳を疑ったと思う。


「親父、それは一体……」

 
最初に口を開いたのはおじいちゃんの側近である相模、ではなく紺炉だった。


おそらく相模はこのことを知っていたから驚かなかったのだと思う。


「これは光矢(みつや)結衣(ゆい)さんが逝った時から思っていたことだ。あの事故は別に故意なものでは無かったが、前に愛華が攫われたこともある。組を続ける以上危険を伴うのは仕方ないが、この先また何かが起これば後悔してもしきれない……」


おじいちゃんの話は悲痛な叫びにも感じた。思えば、おばあちゃんを亡くし、息子を亡くし、おじいちゃんはたくさんの人を失ってきた。


それが組のせいではないとしても、これ以上大切な人を失うことも、大切な人たちに自分と同じ思いをさせることも嫌なんだと思う。


「働くでも学ぶでも何でもいい。やりたいことがあれば援助は惜しまない。これからはお前たちの人生を生きなさい」