2013年 冬
Side 愛華


12月。


街はすっかりクリスマスムードで、夜になるとイルミネーションがキラキラと輝き出す。


12月といえば、私にとってもう一つ重要なイベントがある。


そう、紺炉の誕生日なのだ。


小さい頃は紺炉の絵を描いてあげたり、折り紙で何か作ったりと工作したものをあげていた。


小学校の高学年くらいからは、おじいちゃんに資金援助をしてもらって食べ物とかちょっとした雑貨になった。

 
しかし、私ももう高校2年生。


聞くところによれば、世の高校生は彼氏の誕生日に香水やブランドの小物をあげているというから驚いた。


せっかくクリスマスも近いことだし、今年の誕生日はおじいちゃんの助けは借りずに私だけでちょっといい物を渡したくなった。


香水は香りの好き嫌いがあるだろうし、かと言ってブランドの服やバッグも難しい。


そこで私が今思っているのがピアスだった。


今紺炉が付けているのは黒くて小さいピアス。


昔からそうだったから、多分長いことずっと付けているんだと思う。


紺炉はスーツを着ることが多いし、シルバーも絶対似合うはず。


私でもギリギリ手が届きそうな値段のものを見つけた。


けれど、お小遣い生活の私ではそれでも少ない貯金を崩すことになってしまう。


これはバイトをするしか方法はない!


とりあえず、駅とかに置いてある求人冊子を取ってきた。


高校生可の所は意外とたくさんあったけれど、圧倒的に飲食店が多い。


居酒屋とかは他に比べると若干給料が高いけれど、「3時間〜」とか「週3日〜」という条件が付いてくる。


受験生になる前の最後の冬だから勉強の時間も確保したいし、今の生活リズムをあまり崩したくはない。


1日2時間が限界だ。


こんなワガママな高校生を雇ってくれそうな所は見たところない。


居間の畳に寝っ転がりながら唸っているとおじいちゃんが通りかかった。


「そんな苦しそうな声を出してどうした?」


「おじーちゃん・・・!」


プレゼントを買うためにバイトをしようとしていること、なかなか希望に合った求人がなく嘆いていることを伝えた。


もちろん紺炉のプレゼントとは言っていない。


「なら、心当たりがあるから頼んでみようか?」


さすが極道の組長、色んな人脈がありそうだ。


どんな仕事を紹介してくれるのか検討もつかないけれど、さすがに孫娘に危険な仕事をさせることはないと信じたい。


なぜか「このことは紺炉には内緒にする」という謎の約束をさせられた。


でもその方が私にとっても都合がいい。


おじいちゃんは「愛華のことになると要は口うるさいからな」と笑っていた。


紺炉にはおじいちゃんがテキトーに話をつけてくれるらしい。


こうして私は次の土曜日に面接という名の顔合わせに行けることとなった。