デザートまですっかりご馳走になってしまい、時間を確かめようとスマホを取り出すと画面が真っ暗だった。ボタンを押しても変わらない。


「充電無くなっちゃった?」


「みたいです……連絡しないと紺炉怒るんですよね」


「雨降ってるし、愛華ちゃんの家まで車で送るよ。乗ってる間に僕の携帯から電話かけたら?」


外を見るとさっきまで明るかった空は薄雲が広がって小雨がパラついていた。


東雲さんと会う時はよく雨が降る。


スマホの充電がないと帰りの乗り換え案内も調べられないし、私は彼の申し出に甘えさせてもらうことにした。


困ったことに、紺炉に連絡する時はいつもメッセージだから携帯の番号なんて覚えていない。


とりあえず今から東雲さんの車で送ってもらうことを紺炉に伝えてもらおうと、家の固定電話にかけた。


電話の向こうからは「もしもし!」と切羽詰まった犬飼の声が聞こえた。


まさか私のスマホの充電がないことで、大騒ぎになっていたなんて思いもしなかった——。