私を追いかけてくれることに淡い期待を抱いたけれど、それは見事に外れた。


それにしても、前にホテルにいた女の人とは系統が全く違う、むしろ正反対のタイプの人だった。


大人しそうで、真面目そうで、守ってあげたくなるような可愛らしい人。


もし彼女が、紺炉の周りにいるようなセクシーで綺麗なお姉さんタイプだったなら、いつものように「ほんと紺炉はああいう人に弱いよね」って言ってやれたのに。


「本気じゃないんだろうな」、「あの人もきっとその他大勢の中の1人なんだろうな」って、このざわめく心をなんとか落ち着かせられたのに。


恋愛系の話をする時、紺炉は少しふざける節があった。


「女の子みんな好き」みたいなキャラを過剰に演じているような気がして、実は紺炉の中にはもっと別の、確固たる好きな女性のタイプがあるんじゃないかと思っていた。


今日彼女と話す紺炉を見た瞬間、そんな私の〝もしかして〟は確信に変わった。


わかってしまったのだ。


紺炉が本当に好きなタイプってああいう人なんだって。


知り合いみたいだったけど、もしかして元カノだったりすんだろうか。


それとも、両片想いの好き同士だったとか……?


一体どういう関係なのか気になって何も手につかない。


そして紺炉が帰ってくる気配は全くなかった。


「・・・もう知らないッ!バカ紺炉……」


こういう時は何か別のことに没頭するのが一番だ。


幸い私は来年度には受験生となる高校2年生。勉強をしなくてはならない。


もういちいち気にしない。


紺炉が帰ってきてもあれが誰だったかなんて絶対に聞かない。


私はそう誓って早速鞄から参考書を取り出し机に向かった。


これは最近仲良くなった勉強友達オススメの教材だ。