2012年 夏
Side 愛華


あの事件の後、紺炉は世話係に復帰して家にも戻ってきた。


あんなことがあって。


しかもあの後のホテルでの出来事を思い出すと、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。


私はいつの間にか寝てしまっていたし。


けれど、やはりそれ以上に紺炉が戻ってきてくれた嬉しさの方が勝っていた。


「もう傷は大丈夫なの?」


「はい、もうこの通り!」


紺炉は元気さをアピールしたかったのか、手をブンブン振り回したけど……。


その直後に、脇腹のあたりからじんわり血が滲んでいた。


「包帯巻き直すから!部屋に来て!」
 

やっぱりまだ傷口は塞がっていなかったのだ。


紺炉を部屋まで引っ張って行き、私のベッドに腰掛けさせた。


私は救急箱を持って来て紺炉の前に向かい合うように膝立ちする。
 

「はい、服脱いで」


小さい頃はこうしてお医者さんごっこもやっていたなと懐かしくなる。


まさか本当に手当てすることになるとは。


「なんか昔やったお医者さんごっこを思い出しますね」


紺炉も覚えてくれていたんだ——。


たったそれだけのことでも心が弾んでしまう。


「ていうか、お嬢が脱げって言ったのに照れるのやめてくださいよ。俺の裸なんて見たことありますよね?」


多分、というか絶対赤くなってる私の顔を見て紺炉は笑った。


確かに、昔一緒にお風呂入っていたから初めて見たわけではない。


でもこうして改めて今向き合うと、上半身だけとはいえなんだかすごくHなことをしているように思えて心臓が鳴り止まない。


よく紺炉のことをおじさんだといじるし、紺炉も自分のことをおじさんだと自虐するけれど、ほどよく筋肉が付き引き締まった身体は、全く年齢を感じさせないものだった。


包帯を巻いてる時に私の指がちょっと触れると、ピクっと反応する紺炉が可愛い。


くすぐったいのかな?
 

「はい終わり」


「ありがとうございます」


私たちはしばらく時が止まったかのようにそのまま向かい合っていた。